生前贈与の注意点
近年、土地や建物などを子どもに生前贈与したいという親が増えてきています。
子どもは相続人ですから、生前贈与しなくとも将来的には「相続」という形で親の財産を取得することになるのですが、その背景には「生きている間に子どもに名義を変えて安心したい」といった親心があるようです。 土地や建物といった不動産を親から子どもへ生前贈与する場合、次の点に注意が必要です。 |
生前贈与の注意点その1 登録免許税が高い
土地や建物といった不動産を生前贈与する場合、登録免許税の税率は2%ですが、これが相続になると0.4%ですから、相続で名義変更するのと比較すると生前贈与した場合は登録免許税が5倍高くなります。
例えば土地と建物の評価額が合計1000万円とすると 【生前贈与した場合の登録免許税】 【相続した場合の登録免許税】 となります。 |
生前贈与の注意点その2 農地法の許可が必要
畑や田んぼを生前贈与する場合、その贈与について農業委員会から農地法に基づく許可を受ける必要があります。
しかし、相続の場合だとこの許可が不要になります。 もしも畑や田んぼの生前贈与を考えている場合、農業委員会から農地法に基づく許可を受けることができないときは、相続が開始するまで名義変更はできないことになります。 |
生前贈与の注意点その3 贈与税にはご用心
生前贈与する際に一番気をつけるべきは、この贈与税の問題です。
仮に1000万円の建物を生前贈与したとすると、その際の贈与税は次のようになります。
【贈与税】
1000万円-110万円(基礎控除)=890万円
890万円×50%(税率)-225万円(控除額)
贈与税額=220万円
このように贈与税はかなり高額になりますし、贈与税を負担するのは贈与を受けた子どもになりますから、「生前贈与を受けたはいいが、こんなに贈与税を負担するのであれば生前贈与を断れば良かった」などということになるかもしれません。
しかし、次で説明する相続時精算課税を選択することで、生前贈与の際の贈与税の問題はある程度解決することが可能になります。
生前贈与に欠かせない相続時精算課税制度とは
生前贈与は、その名のとおり「贈与」ですから贈与税が発生する場合が出てきます。
贈与税は多数ある税金の中でも税率が高い税の1つですから、贈与税に気をつけて生前贈与をしないととんでもない税金を支払うことになりかねません。
しかし、生前贈与について一定要件を満たしている場合には控除限度額が2500万円(2500万円までの贈与なら贈与税がかからない)の相続時精算課税を選択することができます。
この相続時精算課税を上手に選択することで、2500万円までの贈与なら、生前贈与する財産に制限無く贈与税を気にせずに生前贈与が可能になるわけです。