相続人の不存在とは
誰かが亡くなって相続が開始しても、その人に必ずしも相続人がいるとは限りません。
天涯孤独で亡くなる方もいるでしょうし、相続人はいたけど相続放棄や相続欠格、相続人廃除等により相続人の資格を失って、相続人がいなくなるという状況もあります。
また、戸籍の消失などで相続人がいるかいないかさえも不明・・・ということもあり得ます。
このように、「相続人がいない」もしくは「相続人がいるかいないのか不明」といった状態を法律上「相続人不存在」といいます。
(実務上相続人不存在となるのは圧倒的に「相続人がいない」ケースです。)
相続人不存在の場合の相続財産の取扱
それでは、相続人がいないような相続人不存在の場合、相続財産はどのように扱われるのでしょうか?(通常の相続では、故人の財産は相続人が引き継ぐことになりますが、引き継ぐ人がいない場合はどうするのかという問題です。)
相続人不存在の場合、まず、相続財産は法人とされます。(民法951条)
そして、家庭裁判所で相続財産管理人という人が選任されて、この相続財産管理人が相続財産法人(相続人がいない故人の相続財産)を管理するようになります。(民法952条)
その後、故人の債権者がいるのかどうか、相続人がいるのかどうかを一定期間公告した後、最終的に相続財産は国庫に帰属することになります。(民法959条)
(ここで故人の債権者がいたら、つまり故人がお金を借りていたとすると、貸していた人に対して、相続財産管理人が故人の財産から返済を行ったり、相続人が出てくれば故人の財産は相続人が引き継ぐことになります。)
このような一定の手続きを経て、故人の債権者もいない(債権者がいて返済をしてもまだ財産が残る場合)かつ相続人も出てこないといった場合は、最終的に「相続人がいない故人の財産は国のものになる」ということです。
ただしこれには例外があり、相続人不存在の場合であっても、相続財産が国庫に帰属しないケースがあります。
国庫に帰属しないケース1 【特別縁故者への分与】
相続人不存在の場合に、相続財産が国庫に帰属しないケースとしてまずは「特別縁故者への分与」という制度があります。
- 故人と生計を同じくしていた者
- 故人の療養看護に努めた者
- その他、故人と特別の縁故があった者
これらの者を特別縁故者といいます。
特別縁故者は相続人ではありませんが、故人と親族に類似できるくらいの関係にあったということから、これら特別縁故者からの請求により相続財産の全部又は一部を特別縁故者に与えようというものです。(民法958条の3)
国庫に帰属しないケース2 【不動産共有者への分与】
もうひとつの例外は、故人が不動産を共有していた場合です。
この場合、その不動産の共有者が故人の共有部分を取得することになります。
あくまでも、共有不動産の故人持分についてのみで、その他の相続財産については特別縁故者が取得するか国庫に帰属することになります。