Q 私の兄は数年前に家を飛び出したきり、今では音信不通でまったくの消息不明状態です。父は私に家を継がせたいらしいのですが、このような状態で父が亡くなった後に家の名義を私に変更することが可能でしょうか?
相続が発生した後、相続財産の名義を変更したり、金融機関の解約手続をするには相続人全員の同意が必要です。つまり、相続人全員で遺産分割協議をするなり、相続人全員の実印及び印鑑証明書が揃わないと、名義を変えるなどの手続ができないのです。
相続人の中に行方不明者や生死不明の人がいるからといって、その人を除いて遺産分割協議をしたとしてもその協議は無効になります。
ですから、相続人の中に行方不明者や生死不明の人がいる場合は、とりあえずその行方を捜すところから始めるべきです。
しかし、どうしても行方がわからないときは次の方法で解決が図れるかもしれません。
- 不在者の財産管理人の選任
- 失踪宣告の申立
不在者の財産管理人の選任
行方不明の人を不在者として、その人の財産を管理する人を家庭裁判所に選任してもらいます。そして、選任された財産管理人が、行方不明の人の代わりに遺産分割協議をしたり、各種手続書類に印鑑を押したりすることが可能になります。
失踪宣告の申立
失踪宣告とは、一定期間生死不明の状態が続いた場合に、家庭裁判所に申し立てることによって生死不明の者を死亡したことにする制度です。
この失踪宣告の申立をすることで、行方不明者は死亡したのと同じ扱いをうけますから、あとは相続に従って処理をすればいいことになります。
これまでの当事務所での取扱い
当事務所では、これまで相続人に行方不明者がいるケースをいくつも取り扱ってきました。
例えば、
・相続人の一人が行方不明で預貯金の解約手続が出来ない
・相続人に行方不明者がいて不動産の名義変更が出来ない
・相続人に外国籍の人がいるが戸籍から居場所が判明しない
などです。
このようなケースにおいて、いずれも不在者財産管理人の選任手続をすることで、手続完了に至ることができました。
解決方法としては、不在者財産管理人選任以外にも、失踪宣告があるのですが、手続にかかる期間等の観点から、当事務所では失踪宣告で対応したケースはありません(事案によっては失踪宣告を選択すべきこともあるでしょう。)。
不在者財産管理人選任手続になりますと、当然に、費用負担や手続の長期化ということになってしまいます。
しかしながら、行方不明者がいる以上、手続を前に進めるためには不在者財産管理人の選任手続によらなければならないこともまた事実です。